コーヒーのプロはダイニチ家庭用コーヒー焙煎機をどう見た? 焙煎の基礎とともに味わいをチェック!

コーヒー機器

コーヒーの生豆を入れてボタンを押すだけで、浅煎りから深煎りまで手軽に焙煎できるダイニチの家庭用焙煎機「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」。その使い勝手はどう? 肝心な味はどうなの? 気になっているコーヒー党のために、実際のところをプロに聞いてみました。

今回は、スペシャルティコーヒーの専門店として多くのファンに支持される「ウッドベリーコーヒー」の品質管理部部長であり、バリスタ競技会や焙煎の競技会でジャッジも務める佐藤優貴さんを訪問。MR-F60Aの評価のほか、そもそも焙煎とは何なのか、基本的な部分も含めてお話をうかがっていきます。

 

【今回紹介する製品はコチラ】 コーヒー豆焙煎機 MR-F60A ダイニチ
コーヒー豆焙煎機 MR-F60A

家庭で手軽に本格的な焙煎を楽しめるコーヒー豆焙煎機。渦状に吹き上がる熱風式で、豆を回転させながら焙煎するため、ムラを少なく焙煎できます。焙煎釜の熱風の通り道に2つのセンサが搭載され、常に適切な温度管理ができるのも特徴。キッチンの戸棚に収まるコンパクトサイズ(高さ280×幅241×奥行186mm、重さ約2.3kg)。生豆60gを入れて焙煎レベルを5段階から選ぶだけと、初心者でも簡単に使えます。

 

【私がチェックします!】 ウッドベリーコーヒー 佐藤優貴さん ウッドベリーコーヒー 佐藤優貴さん
株式会社ウッドベリーコーヒー品質管理部部長・グリーンビーンバイヤー。「ジャパン ブリューワーズカップ2018」ファイナリスト。毎年海外のコーヒー農園を訪れ生産者と直接会い、買い付けを行う。国内のバリスタ競技会ジャッジとしても活躍。焙煎の競技会ではヘッドジャッジを務めることも。

焙煎が果たす役割とは?

焙煎について語る佐藤さん

焙煎は、味や香りがほとんどない生豆を加熱して煎る工程のこと。佐藤さんは、「焙煎は、コーヒー豆がコーヒーになるために不可欠の工程」と語ります。

 

「まだ完全に解明されていないほど、焙煎によってコーヒー豆には複雑な変化が起こります。焙煎を始めると、まず豆に含まれるショ糖やクロロゲン酸などが分解され、酸味の成分が形成されます。焙煎中盤では、『メイラード反応』が起きてコーヒーらしい甘さや香りが生まれます」(佐藤さん)

 

メイラード反応は、加熱により糖とアミノ酸などが反応して褐色に色づく現象のこと。身近な例でいうと、肉やパンなどがこんがり香ばしく焼けるとき、このメイラード反応が起こります。

 

「焙煎ではメイラード反応が重要で、主にコーヒーの甘さの印象に関わってきます。焙煎が進むにつれて、香りは穀物からキャンディ、チョコレートへと変化していき、甘い香りが強くなっていきますが、味覚としての甘さ(甘味)は減少していきます。この嗅覚と味覚の合計でコーヒーの甘さを捉え、それぞれをどんな状態にして組み合わせるのかをコントロールするのがメイラードフェーズの大きな役割です。そして終盤は、糖が加熱されてカラメル化が進行し、酸味が減少して独特の苦みと香ばしさが出てきます」(佐藤さん)

↑左から右へ焙煎度合の深い順番に並べたもの。一番右が生豆で、焙煎度合が深くなるほど色が濃くなっていきます

焙煎の醍醐味は豆の個性を引き出すこと

つまり、焙煎が浅いと酸味が強く軽い口当たりとなり、焙煎が深くなるにつれて香ばしさや苦味が増すということ。焙煎次第でコーヒーの味が大きく変わるため、焙煎はコーヒーの大きな醍醐味のひとつだと佐藤さんは語ります。

 

「この豆の口当たりが好きだなと思ったら、それを一番感じられるように焙煎します。香りが好きだったら、香りを最大限に引き出す焙煎ってどうなんだろう……と。豆の個性を最大化するためにどう焼くか、アプローチを考えるのが楽しいんですよね素材をどう表現したいか、意思を込める工程なので、コーヒー提供者の自己表現につながっていると思います」(佐藤さん)

 

焙煎の競技会ではヘッドジャッジを務めることもある佐藤さん。ジャッジでは、どのような部分を評価しているのでしょうか?

 

「焙煎の大会では、Fragrance/Aroma(粉の香り・液体の香り)、Flavor(基本五味と口中香)、After taste(後味)、Acidity(酸味)、Sweetness(甘さ)、Mouth feel(口当たり)、Overall(全体評価)の7項目で評価します。全ての項目で高評価を取れるとコーヒーの魅力を引き出した焙煎として評価されますが、いずれかの項目が良くなければ、コーヒーの魅力を引き出し切れていないという評価になります」(佐藤さん)

コーヒーを飲む佐藤さん

 

焙煎したあとの飲み頃の時期や、保存についてもうかがってみました。

 

保存は光、温度、湿度、酸素を避ければ良いと思います。常温であれば、焙煎して2~3日から3週間ぐらいが飲み頃。焙煎したては豆からガスが多く出て湯と豆がなじまず、コーヒーの成分がうまく抽出できないんです。温度に関しては、冷蔵・冷凍保存もいいですが、毎日1杯ずつ飲む場合は、出し入れの際に結露して劣化しやすくなるので、常温で缶や瓶に入れておくほうがいいでしょう。なお、冷凍保存する場合は、焙煎後、1週間ほど常温で置いてから冷凍保存するのがオススメ。焙煎したあと、しばらくしてから香りが広がっていくフェーズがあり、その前に冷凍庫に入れてしまうと香りが開くのがストップしてしまいますから」(佐藤さん)

焙煎機にはどんな種類がある?

続いて、焙煎の方法について聞いていきます。焙煎の方法は大きく分けて手煎りと焙煎機に分かれます。手煎りは生豆を入れた手鍋や手網を振りながらコンロで煎る方法が一般的。

 

「手煎りは昔やったことがありますが、チャフ(豆からはがれる薄皮)がコンロ周りに飛び散って掃除が大変なんですよね」と佐藤さん。お店では複数の焙煎機を使い分けているとのことで、焙煎機の種類についても聞いてみました。

 

焙煎機は大きく分けて3種類の方式があります。1つ目は、細かい穴が空いたドラムを回転させながらバーナーの火を当てる直火式。2つ目は、穴が空いていないドラム自体を熱して豆を加熱し、さらに熱風を送り込む半熱風式。3つ目は、熱風だけを吹き込んで焙煎する熱風式です熱源は主にガスと電気で、2010年代後半から、電気を熱源にした小型の熱風式焙煎機が増えています。なお、熱風式は高熱のドラムに豆が触れないため、味がマイルドになり、焙煎ムラも少ないと言われています。この店舗(ウッドベリーコーヒー荻窪店)でも、1階の焙煎室ではガスを熱源とするメインの熱風式焙煎機、3階には電気を熱源とする小型熱風式焙煎機を備えていて、豆によって使い分けています。1階の焙煎機は大量のコーヒー豆を安定した品質で焙煎でき、3階の電気式焙煎機では少量の豆を細かく設定して焙煎しています」(佐藤さん)

約3000万円という1階の大型焙煎機

↑約3000万円という1階の大型焙煎機。ここで焙煎した豆は各店舗へと送られていきます

ダイニチ「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」をプロの視点でチェック

 

それでは、佐藤さんにダイニチの「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」をプロ目線でチェックしていただきましょう。まずはデザインから。

 

すごくシンプルですっきりとしたデザインに驚きました。イメージとしてはドカッと大きくて、ガスコンロの上でくるくる回すスタイルを予想していたので(笑)。それと、焙煎機としては軽くて、動かしやすい。取っ手があるのも素晴らしいなと感じました」(佐藤さん)

 

さまざまな豆で「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」を使ってみた佐藤さんは、その手軽さに感銘を覚えたとのこと。

 

すごく助かったのは、おまかせで全部自動でやってくれる点ですね。家庭なら焙煎している間に、洗濯や皿洗いなどほかの作業ができるのがいい。操作も生豆を入れて、焙煎度を選んでスタートを押すだけ。これだけ手軽に焙煎できるのは、家庭用としてはこの上ないメリットですね。お手入れは、上フタの取っ手を持ち上げて、まとまっているチャフを捨てるだけなのでラクでした。大きい焙煎機だとチャフ溜めやドラムの下など、いろいろな部分をきちんと掃除する必要があるので、このように1か所だけ手入れすればいいのは便利です」(佐藤さん)

↑焙煎時に出たチャフは、本体上部のチャフコンテナに集まるしくみ

 

では、肝心のコーヒーの味はいかがでしょうか?

 

すごくまろやかで雑味が少なく、キレイな味。素直に『おいしい』といえる味ですね。いろいろ試してみて、5段階の焙煎レベルのなかでは、比較的深煎りの4番が好きでした。しっかり火が入っている感じが出ていて、味のデベロップが進んでいるのが4番でしたね。4番でいろいろな種類の豆を焼いてみたんですが、どれも『この豆ならこういう味になるな』と、自分の想像通りの味になっていて、安定性もありました。ちなみにこれ、お値段は…? (直販価格で税込3万4760円と聞いて)え、安いですね! ウチにある小型の電気式は60万円するんですけど(笑)」(佐藤さん)

 

また、今回はダイニチWebShopで販売している生豆のうち、5種類(コロンビア、マンデリン、ブラジル、モカ・ブレンド、キリマンジャロ・ブレンド)をピックアップして試してもらいました。佐藤さんのお気に入りはどの豆だったのでしょうか?

 

試したなかでは、マンデリンとコロンビアが好きでしたね。マンデリンは口当たりがすごくよくて、リッチでぷりっとしていました。マンデリンは華やかでアーシーな(土のような)フレーバーが特徴で、ハーブを思わせる風味が苦手な方もいると思うんですけど、そこがうまく抑えられていて柔らかく優しいマンデリンが楽しめました。コロンビアはもともと好きなんですが、キレイな酸味が感じられていいと思いました」(佐藤さん)

多彩な豆を楽しみたい人には特にオススメ

最後に、「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」はどのようなユーザーにオススメか、また、本機を楽しむヒントについて佐藤さんにうかがいました。

 

これだけ手軽なら、使う人を選ばないと思います。いろいろな生豆のラインナップを揃えて、豆の個性を引き出す焙煎はどれか、自分なりに試行錯誤できるのがいいですね。ときには飲み頃にこだわらず、その日の気分に合わせて焼いてもいいでしょう。そんなスタイルが、この焙煎機だったら簡単にできますね。生豆であれば半年ほど保存することも可能なので、ちょこちょこ飲むコーヒーを変えたいという方には特にオススメです」(佐藤さん)

MR-F60Aの製品詳細はこちら

プロの焙煎を手軽に再現。
家庭で使えるコンパクトサイズ。

コーヒー豆焙煎機 MR-F60A
ダイニチWebShop限定モデル
熱風式焙煎 焙煎レベル調節5段階 生豆投入量60g 焙煎時間約25分

※:冷却時間約10分を含む。

製品詳細へ

ベストバイロゴ

 

撮影/高原マサキ(TK.c) 執筆/卯月 鮎
制作協力/GetNavi web

 

【今回ご協力頂いたお店はコチラ】

ウッドベリーコーヒー

都内に5店舗、鎌倉に1店舗を展開するスペシャルティコーヒー専門店。最新のエコ性能を持つ焙煎機と熟練の技術を駆使し、焙煎士がひとつひとつのコーヒー豆を焼き上げています。中間業者を介さず、コーヒー生豆を生産者から直接買い付けるダイレクトトレードにより、生産者に適正な価格を支払うプロジェクトも推進。オーガニック食材を使ったコーヒーに合うフードにもこだわっています。

 

↑今回取材にお邪魔したウッドベリーコーヒー荻窪店

 

↑生産国を訪れて買い付けを行う佐藤さん

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