コーヒーにはどんな種類がある? 産地、焙煎度による味の違いとオススメの豆をプロが解説!

コーヒー機器

唯一無二の芳香で、世界中の人を魅了しているコーヒー。人々が交流し、豊かな時間を過ごすカフェ文化の中心にあり、「コーヒーブレイク」で心身をリフレッシュする機会を与えてくれる特別な存在です。健康効果にも注目されており、コーヒーに含まれるカフェインは、眠気覚ましや消化の促進のほか、基礎代謝を促進する効果があるとか。ポリフェノールも豊富で、老化や生活習慣病の原因となる活性酸素を取り除く効果も期待できるそうです。

コーヒー豆の味わいは産地によって特徴があり、焙煎や挽き方でも味も違ってきます。様々な種類があるなかで、どれを選べばよいかわからない……そんな方のために、今回は、日本が誇る名喫茶のバリスタにコーヒー豆のガイドを依頼。豆の種類、産地、焙煎、挽き方とそれぞれに適した飲み方などについて教えてもらいました!

 

 

【私が教えます!】

バリスタ・天野 大(あまの だい)

世界中にファンがいる、1989年に創業した渋谷の喫茶店「茶亭 羽當(ちゃてい はとう)」のバリスタ。東京出身で、バリスタ歴は20年以上。

 

 

その1 コーヒー豆にはどんな品種がある?

コーヒーは、コーヒーの木に生る真っ赤な果実(コーヒーチェリー)の中の種(豆)を焙煎し、これを挽いて淹れることで味わえる飲み物。商業向けに栽培されているコーヒーにはアラビカ種、ロブスタ種(カネフォラ種ロブスタ)の2大品種があります。ほかにリベリカ種がありますが、生産量がきわめて少なく日本にはほとんど輸入されません。アラビカ種とロブスタ種ではどんな違いがあるのでしょうか?

「アラビカ種のほうが飲まれていた歴史が古いとされ、エチオピアのアビシニア高原が原産地といわれています。一方のロブスタ種は近代になってから、コンゴで発見されたとか。ロブスタ種のほうが病気に強く、高温多湿の気候への適応性が高いので育成が比較的簡単ですが、アラビカ種のほうが一般的に風味や香りが優れているといわれており、流通量も7~8割と多いです。ちなみに、シアトル系のコーヒーブランドは多くがアラビカ種100%です。

ロブスタ種は煎った香ばしさと、苦みや渋味が豊かな一方で酸味は控えめ。単体で使うことは少なく、味の調整用やインスタントコーヒー、缶コーヒーなどに利用されるケースが多いです。ただしベトナムは例外で、ロブスタ種が主流ですね。ほかにはイタリアのメーカーによるコーヒー豆、つまり本場のエスプレッソ用の豆にはロブスタ種をブレンドすることが多いです。これはロブスタ種特有の苦みを加えることで、味に深みを与えるためでしょう」(天野さん)

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その2 産地による味の違いをチェック

コーヒーは、北回帰線から赤道をまたいで南回帰線の間にあたる「コーヒーベルト」と呼ばれる地帯を中心に栽培されており、名産地は南米やアフリカ、東南アジアなど、熱帯や亜熱帯地域に集中しています。

「高品質なコーヒー豆を育てるには、降雨量、日照量、気温、土壌の4条件が欠かせません。また、成長期には大量の水を要する一方、収穫期には乾燥していることが重要。そのため、雨季と乾季がはっきりと分かれている地域が適しています。気温は高過ぎず低過ぎない環境を好むうえ、昼と夜の寒暖差も必要。必然的に、熱帯や亜熱帯でも標高の高い場所が名産地となります。例えば『キリマンジャロ』や『ブルーマウンテン』は山や山脈の名前ですよね」(天野さん)

↑山の斜面に設けられたコーヒー農園

 

続いて、天野さんに主要な産地を中心に各コーヒー豆の風味的な特徴を教えてもらいました。

「南米から解説すると、『ブラジル』は苦味と酸味がほどよく調和し、好バランスなのでブレンドのベースにも重宝されます。『コロンビア』もバランスの良さと酸味やフルーティな甘みが特徴。こちらもブレンドのベースになることが多いです

中南米の『グアテマラ』は、果実味豊かな酸味とコクに優れ、華やかな香りとキレのいい後味が魅力です。そして『ブルーマウンテン』(ジャマイカ)は、エレガントな香りと軽やかな口当り、なめらかなのど越し。全ての味わいの要素が調和しており、“コーヒーの王様”とも称される高級品種です。

↑コーヒー農園での収穫風景

 

アフリカの『キリマンジャロ』(タンザニア)は、しっかりした酸味とコクに加えて甘やかな香りも特徴。よく“野性味あふれる味”と表現されるコーヒー豆ですね。『モカ』はイエメンとエチオピア産の豆の総称で、果実味あふれる香りや豊かな酸味、甘み、コクが魅力です。

そしてアジア圏を代表する産地が、インドネシア・スマトラ島の『マンデリン』。深く上品な苦味とコクがある一方、酸味は控えめで、ほんのり香るハーバルかつスパイシーなニュアンスが特徴です」(天野さん)

大陸ごとの特徴をあえて分類するのであれば、南米や中南米はバランスの良さ、アフリカはフルーティで酸味が豊か、アジアは苦みやコク深さを得意とするといえるでしょう。

銘柄 地域 特徴
ブラジル 南米 苦味と酸味がほどよく調和し、バランスの取れた味わい。
コロンビア 豊かな酸味、フルーティな甘み。バランスに優れた味わい。
グアテマラ 中南米 豊かな酸味とコク。華やかな香りとキレのいい後味。
ブルーマウンテン エレガントな香りと軽やかな口当り。なめらかなのど越し。
キリマンジャロ アフリカ しっかりした酸味とコク。甘い香り。
モカ フルーティな香り、豊かな酸味、甘み、コクが特徴。
マンデリン アジア 上品な苦味とコク。酸味は控えめで、ハーブやスパイスの風味も。

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その3 焙煎度による味の違いをチェック

焙煎とは、コーヒーの生豆を煎る(ローストする)加熱作業のこと。

「焙煎度合いが弱いものを『浅煎り』、強いものを『深煎り』といい、その中間が『中煎り』。一般的に浅煎りは酸味が強くて苦味は控えめ。深煎りになるほど苦味が強くなる一方で酸味は弱まっていきます」(天野さん)

↑焙煎の深さによって色が変わります。左から時計回りで浅煎り、中煎り、深煎り

 

なお、焙煎の度合は加熱時間に応じて8種類の呼び方があり、浅煎りには2種類(加熱が短い順からライトロースト、シナモンロースト)、中煎りには2種類(ミディアムロースト、ハイロースト)、深煎りには4種類(シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンロースト)の呼び名があります。

呼び方 焙煎度合 味わい
ライトロースト 浅煎り 強い酸味があり、苦味はほとんどない。豆そのものの味をダイレクトに感じられ、豆によってはフルーティな風味が出やすい。
シナモンロースト 爽やかな酸味があり、苦みが少ない。豆によってはフルーティな風味が出やすい。
ミディアムロースト 中煎り やや酸味が強く、苦みが少ない。アメリカンなどで使用される。
ハイロースト 酸味が穏やかになり、苦み、甘みも出てバランスが良い。
シティロースト 深煎り 酸味と甘み、苦みがバランス良く楽しめる。ドリップコーヒーで人気。
フルシティロースト 酸味が落ち着き、十分な苦みと香ばしさが楽しめる。エスプレッソやカフェオレに向く。
フレンチロースト ほぼ酸味はなく、強い苦みと香ばしさがある。エスプレッソやカフェオレ、アイスコーヒーに向く。
イタリアンロースト 強い苦みがあり、エスプレッソやカフェオレ、アイスコーヒーに向く。

なお、自分にとってベストな焙煎度合を追求するなら、自宅で焙煎してもOK。鍋やフライパンで焙煎する方法もありますが、手軽に安定した焙煎をしたいなら専用のマシンを使うのもオススメです。

↑天野さんのオススメは、マシンにおまかせで焙煎できるダイニチのコーヒー豆焙煎機 MR-F60A。焙煎度合は5段階で調整でき、約25分の短時間で焙煎できます。インテリアになじむシックなデザインや、コンパクトなサイズも特徴

 

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その4 挽き方をチェック

コーヒーの味にとってもうひとつ大切な要素が挽き方。具体的には、豆をミルで挽いた際の粒のサイズです。これは粒度(りゅうど)やメッシュとも呼ばれます。

「粒度は一般的に、粒が大きい順から粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽き、極細挽きの6段階。細かく挽けば挽くほどコーヒー成分が抽出され、味が濃くなり苦味が強くなります。反対に、粗く挽くほどコーヒーは薄口で苦味は弱くなり、酸味は強くなります。

粒度は目指す味わいや抽出方法、使う器具によって向き不向きがあるので、それぞれに合った粒度にするのがベター。例えば、苦味が魅力で、抽出器具にコーヒー粉をぎっしり詰めるエスプレッソは極細挽きにするのが一般的。台形型ペーパーによるハンドドリップやコーヒマシンの場合、細挽き~中粗挽きを目安に、好みで調整するといいでしょう」(天野さん)

 

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その5 目的のコーヒーにぴったりの焙煎度と挽き方は?

では、コーヒーごとに適した焙煎度と粒度とは? ブラックコーヒー、カフェオレ、アイスコーヒーなど、それぞれのオススメを教えてもらいました。

ブラックコーヒーの焙煎度は、酸味を楽しみたいなら浅めで、苦味を楽しみたいなら深めがオススメです。粒度は前述したように、抽出方法に応じて選んでください。アイスコーヒーの場合は、一般的に深煎りの細挽きがオススメといわれますが、すっきりフルーティなアイスコーヒーを楽しみたいなら、浅煎りや粗挽きを選ぶのもアリです」(天野さん)

ちなみに、まろやかな口当たりやクリアな苦みが持ち味の水出しコーヒー(ダッチコーヒー/コールドブリューコーヒー)は焙煎度合いを深めにするのがオススメ

「水出しに適した豆の粒度は抽出器具によって変わり、ウォータードリップサーバーなど2~3時間程度の抽出時間が短めな器具なら細挽き~中挽き。水出しコーヒーポットやフレンチプレスなど、抽出時間が8時間以上の器具の場合は、細挽きだと雑味やエグみも出やすくなるので、中挽き~粗挽きがオススメです」(天野さん)

ミルクで割るコーヒーといえば、カフェオレとカフェラテが代表格。焙煎度と挽き方のオススメは?

「どちらもミルクの甘みに負けないよう、濃くて苦いコーヒーが推奨されます。ただし、カフェオレはドリップコーヒーがベースなので深煎りの細挽き、カフェラテはエスプレッソがべ―スなので、深煎りの極細挽きがオススメです」(天野さん)

↑エスプレッソには深煎りの極細挽きがオススメ

 

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その6 コーヒー豆の購入方法

豆の種類もわかってきたところで、いざ購入! さて、いったいどこで手に入れればよいでしょうか?

「初心者の場合は、街のコーヒー豆専門店で購入するのがオススメ。ショップのスタッフにコーヒーの好みや予算、自分が持っている器具などを伝え、いろいろと相談できるので安心です。このほか、コーヒーチェーンの店舗でも豆を販売していますので、お店の味が気に入っていたら購入するのもアリ。購入の手間を省くなら、オンラインショップという手も。情報が充実しているサイトも多く、自分なりに比較しながらじっくり選べるのがメリットです」(天野さん)

自分で焙煎したい方にとっては、生豆の購入方法も気になるところ。

「オンラインではもちろん、街のコーヒー豆専門店でも販売しているところはあります。東京で有名なのは『やなか珈琲』などですね。生豆は長期保存できるのも魅力なので、ネットで多めに買ってもOK。私がオススメする焙煎機『MR-F60A』を発売しているダイニチでは生豆を販売するサイトも運営しているので、ここで購入するのもオススメです」(天野さん)

ダイニチの公式通販サイト「ダイニチWebShop」ではコーヒーの生豆を販売。単一銘柄のみならず、ブレンド生豆も販売しているのがポイントです

 

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その7 おいしいドリップコーヒーの淹れ方

おいしい豆が手に入っても、淹れ方を失敗しては台無し。ということで、ハンドドリップの名手である天野さんに、おいしく淹れるコツを聞きました。

「ここまで解説した通り、飲みごろの豆を求める味に合った焙煎度と粒度で用意してください。そのうえで大切なのは豆の量とお湯の温度、そして抽出の量とタイミングです。

おいしく淹れるには、コーヒーの豆はたっぷり使うのがベター。私の店『茶亭 羽當』の豆量はかなり多めで、一杯180mlのコーヒーに対し、豆を30g使います。ここまで多くなくても、私としては20gはないと物足りないですね。温度は90℃前後がオススメですが、より酸味を出したいときは95℃前後で注ぎましょう。

お湯をドリッパーに落とす際は少しずつゆっくり注ぎ、3回に分けて淹れます。1投目は蒸らし。粉の中心にそっとお湯を注ぎ、フィルターにお湯がかからないようにして、サーバーにぽたぽたと垂れてくるくらいで注ぐのをやめて蒸らします。蒸らしの時間は10~20秒が目安。2投目は、中央から500円玉くらいの大きさの範囲で『の』の字を描きながら約150ml注ぎ、この2投目が完全に落ちきる前に3投目を20mlほど注いで完成です」(天野さん)

↑1投目はフィルターにお湯がかからないよう慎重に

 

↑蒸らしは10~20秒

 

↑2投目はたっぷりと。500円玉くらいの範囲で「の」の字を描くように注ぎます

 

↑さらに、仕上げの3投目を注げば完成!

 

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その8 まとめ

好みのコーヒーに出会うには、コーヒー豆の種類を知り、その性質を掴むことが重要。コーヒー豆は、産地ごとに特徴があり、総じて南米や中南米はバランスの良さ、アフリカはフルーティで酸味が豊か、アジアは苦みやコク深さを得意とすることがわかりました。

焙煎に関しては、一般的に浅煎りは酸味が強くて苦味は控えめ。深煎りになるほど苦味が強くなり、酸味は弱まります。挽き方について、細かく挽くほど味が濃くなり苦味がアップし、反対に、粗く挽くほど薄口で苦味は弱くなり、酸味が強くなります。これらを知るだけで、コーヒーを味わう楽しさが、いままでとはまるで違ってくるはず。ぜひ、好みにぴったりなコーヒー豆を見つけて、上質なリラックスタイムをお過ごしください!

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【番外編】よりおいしいコーヒーを飲むためのおすすめモデル

ダイニチ工業

コーヒー豆焙煎機 MR-F60A

本稿のガイド役・天野さんオススメの焙煎機。熱風の通り道に2つの温度センサー搭載することで、ムラの少ない安定した焙煎精度を実現。1つめのセンサーで熱風を狙った温度に調整し、2つめのセンサーで気温や豆量の変化による温度のずれを修正します。使い方は、焙煎度合を1~5段階から選んでスタートを押すだけ。約25分の短時間で焙煎できます(冷却時間約10分を含む)。一般的な家庭のキッチン棚に収納でき、持ち運びしやすいコンパクトなサイズ(高さ280㎜×幅241mm×奥行186mm)と質量(約2.3kg)も特徴。熱風式を採用したことで部品点数を少なくし、リーズナブルな価格も実現しました。これを使えば、自分だけのベストな豆を追求することも可能。ぜひお試しを!

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制作協力/GetNavi web

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