カフェプロができるまで

おいしい本物のコーヒー

あくまでもこだわる「おいしい本物のコーヒー」

青天の霹靂!ストーブ屋がなんでコーヒーメーカーを開発するの?

「当社で焙煎機能付きコーヒーメーカーを開発することになった。ついては布川もメンバーの一人としてこのプロジェクトに加わるように。」こんな上司の一言から私のコーヒーメーカー開発は始まりました。

そもそも当社、ダイニチ工業は石油気化燃焼技術を得意とする会社で、家庭用や業務用の石油ファンヒーターを作ってきた会社です。私も入社以来、灯油の分析から燃焼バーナーの低NOX化、灯油気化装置の改良など石油ファンヒーターにかかわった仕事をしてきました。また、これまではコーヒーが格別うまいものだという認識もなく、レギュラーコーヒーは淹れるのが面倒だからインスタントコーヒーで十分と思っていましたし、飲みたいという欲求に駆られることもあまりありませんでした。

ですから上司からの指示でコーヒーメーカーを担当することにはなったものの、

というのが正直な感想でした。

焙煎機能付きコーヒーメーカー、焙煎って何者?

今回の「焙煎機能付きコーヒーメーカー」の開発は、当社と以前から取引のある大手商社から持ち込まれた話とのことでした。焙煎機能付きコーヒーメーカーというものはこの世になかったわけではないのですが、なかなか思うような味を出せるものがなかったのだそうです。

そこで石油ファンヒーター開発で培った、ヒーターを扱う技術、制御技術、ニオイを抑える触媒技術などを応用して、ダイニチ工業で作れないかとの打診があり、トップのゴーサインが出たとのことでした。

担当者の一人に選ばれたのはいいですが、この時点でのわれわれは「焙煎機能付きコーヒーメーカー?焙煎って何者?」こんなレベルからのスタートでした。

1号機は作ったけれど…焙煎の「深い所」が見えてこない

今回開発するコーヒーメーカーの最大の特長は生豆を焙煎できる点にあります。先に述べたように焙煎自体を知らなかった私ですから、当初、コーヒーの奥深さなどというものはまったく知る由もありません。

私の最初の仕事は不完全ながらもコーヒーメーカーの試作1号機を制作し、試験をすること、データをとることでした。しかし、「試験」「データ」を取ろうとふと考えてみたところ、慣れている石油ファンヒーターの場合と異なり何か深い所が見えないのです。深い所とは、それをやる上でのポイントといったようなものでしょうか。一応、一般的に考えられる確認項目、不具合点について見つけだすことは割とたやすいことです。電気を使い、ヒーターを使って熱する機器の訳ですからその関係のデータ取りを行えば済むことなのです。ところが当時何か心に引っかかる物を感じていました。

コーヒーの生豆を焙煎し、それをグラインドし、抽出するまでをボタン1つで行えるコーヒーメーカー、それが開発テーマです。当然味は最重要項目です。味の善し悪しのデータ取りというのは非常に難しい物で、成分分析などによって調べる方法もありますが、だいたい検出される成分は同じで、含有率の差が見いだされるにすぎません。一般的には、官能試験などが最終評価となります。

ところが、開発初期での試作機から作り出されるコーヒーは、旨い、不味い、好き、嫌いの判定以前に

この回答が多かったのでした。生豆から作ったコーヒーだからこのような味になるといわれれば、納得できなくもないのですが、個人的には納得いかなかったのです。コーヒーを知らない私ですら疑問に思うのですから、詳しい人ならどのように感じることか…。

自分が納得できる「焙煎豆」を求めて

ここから、私がコーヒーに悩まされ、試行錯誤を繰り返す日々が始まりました。コーヒー関係の書物を読みあさることは元より、評判の自家焙煎喫茶店などへ足を運びみんなでコーヒーを飲んでみたり、焙煎業者の声を聞き集めたり、まずコーヒーを理解することに精力をつぎ込みました。ある喫茶店でお店のすべてのコーヒーを注文し、回し飲みしながら、あーだこーだの話をしているとお店の人も妙なお客だと思ったのでしょう、「コーヒークラブですか?」と聞かれたこともありました(お店の方には「そうなんです。」とウソをついてしまいました。ゴメンナサイ…)。

そんな中で感じたことは、コーヒーを扱っている人たちはみな焙煎、抽出に対する自論を持っており、それで満足はしておらず、常に探求をやめない姿勢を持っていることでした。反面、そのような考えをもつ人たちに否定的な人も存在しました。つまり、焙煎なんてそんなに難しい物ではない、焙煎を聖域のように語るのはナンセンスだと。

そんな情報の中で、このままではまわりの意見にふり回され、時間だけが過ぎていってしまうことに気づきました。製品発表の時期も遠い先にある訳ではありません。そこで、まず素人ながらも自分の感性を信じて、自分の納得できる焙煎豆を実現させることに集中しました。コーヒーの生豆に熱が加わり、水分が抜け、煎りあがる過程での爆ぜる音、豆の膨らみ、そのときの釜の温度、時間、できあがった焙煎豆を抽出したコーヒーの味について、自分の判断基準でテストをくり返しました。

そんな試行錯誤の中で釜全体を加熱する上下ダブルヒーターの優位性にたどりつきました。豆の状態、ほのかに感じられるコーヒー特有の甘み、苦みだけではないさまざまな味が見えてきたのでした。

ダブルヒーターの効果、そして難しさ

ダブルヒーターの効果はなんといっても、焙煎釜全体を必要十分な熱量で満たすことが可能な点にあります。たとえばホットプレートのみでは、どうしてもプレート表面温度をある一定の温度以上に加熱できないため、エネルギー消費率(J/S)が温度の上昇とともに、どんどん低下してしまいます。この場合、焙煎の工程上、俗にいうカロリー不足の状態となってしまいます。

逆に赤熱する程高温化したヒーターから発せられる輻射熱などを片面から与えた場合、焦げすぎや、煎りむらが発生し、さらに釜の中でコーヒーに引火する危険性がかなり高くなるため、安全面からも注意を要します。

ダブルヒーターの採用はこのあたりの優位性から決定されたのです。

釜は決まった、これで最高のコーヒーが作れると喜ぶ訳にはまいりません。試験の中でコーヒーを焙煎する時に細心の注意を必要とする課題が見えていたのです。それは、煎り止めを正確につかむことです。コーヒーはライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンなどその焙煎度に応じた名前がつけられています。

当然、味はそれぞれに特長があり、さらにそれらを作り出す場合、温度、焙煎時間は正確に検出し、焙煎工程を進行しなければなりません。制作した釜は、構造、加熱方法、豆の量(1回60g)的な要因により、2℃の温度や5秒の時間の検出ブレで要求する焙煎状態から遠く離れてしまう様な性質を持っていたのでした。さらに釜の温度状態がいかなる状態からでも正確な焙煎が行える様に、なるべく早く焙煎が終了する様に、といった営業サイドからの要望もありました。これは、コーヒーの初心者でも使いこなせる様な簡便性を持たせるということです。

釜との戦い。実験の日々…

温度、時間の検出器は当然の如く正確に検出はしてくれ、マイコンは認識してくれるのですが、ダブルヒーターを採用した焙煎釜は、一体の釜ではなくいくつかの部品を組み合わせた形で構成しているため、たとえば温度検出素子が検出する温度が豆の状態と常に一対にはならず、さらに機体ごとに異なり、経時変化も生じてしまいます。2℃や5秒のバラツキは容易に発生してしまうのです。金属はその種類によって、固有の熱伝導度という物性があります。熱は電圧、水圧などのように高い所から低い所へ移動します。しかし、面の接触面積、間に挟み込まれるほかの物質の種類などによって熱の伝わり方は変化し、結果として温度検出が一定になってはくれないのです。

この問題を解決するために、さまざまな条件パターンにおける細かな温度、時間データを来る日も来る日も取り続けました。データを解析し、そこから釜の特有の性質を見つけ出したかったのです。焙煎の制御にかかわるプログラムは100回以上変更したでしょうか。

こんな連日の試行錯誤の結果、解決する方法の突破口が見えてきました。きっかけは今まで眺めていたグラフの見方を少し変えただけという些細なことでした。それだけでまったく異なる発想が生まれるのですからおもしろいものです。それからは早いものです。あれほど悩み続けた問題が次々と解決していくではありませんか。ついに完全とはいえないまでも、これなら使えるという制御プログラムが完成したのです。

残された問題。ニオイ、煙など

こんな試行錯誤のうえ、発売を開始したMC-502はまだまだ良くしなければならない点がいくつもあります。ダブルヒーターを安全性も考慮して採用したとお話しましたが、これは裏を返せば弱点でもあるのです。

コーヒーを焙煎すると必ず煙が発生します。煙の成分はほとんどが水蒸気で、そのほかカフェイン、酢酸、アセトアルデヒド、キナ酸類が多少含まれています。これらは悪臭物質といわれる物も含み、人によってはかなり嫌う場合があります。

煙、ニオイを完全に消し去るには、強力な吸着剤を用い吸着するとか、加熱触媒を用い分解するなどの手法が一般的です。カフェプロは後者の触媒を用い煙を処理しようとしているのですが、この効果がまだまだで、50%程度しか満足できません。豆を焙煎するために用いているヒーターは触媒を加熱する目的も担っているため、豆のでき上がり、安全性、ヒーター寿命を考慮するとヒーターを高温化できず触媒加熱がいまひとつなのです。同じように煙の問題に関しても、まだまだ未解決の部分が多く、現状では少し換気するとか、換気扇の近くで使用してくださるようお客様にはお願いせざるを得ない状態です。

今の、そしてこれからの私たちの課題

ここまで長い文を読んでいただきありがとうございました。

「カフェプロ」発売後は、われわれが事前に心配していた予想に反して(?)、実際にお使いの方々から「おいしい」「コーヒーの認識が変わった」などの声をうかがい、開発担当としては少しほっとしているところです。今後もお客様のご期待を裏切らないようにさらによいものをつくりたいと思っています。

ところでコーヒー素人だった私ですが、現在はどうかというと、やはり素人なのかもしれません。コーヒーの味は多少わかるようにはなりましたが、実際のところ、うんちくを並べられる知識はそんなにはないように思います。われわれがおいしいコーヒーと思ってもそれは、何の意味もなく、やはりお客様からおいしいといわれることが一番なのです。

現在も製品改良や次の機種の開発のため、チームで連日連夜コーヒーと闘っているところです。決して100点満点のコーヒーメーカーではなく、欠点はいっぱいありますが、「今までとはまったく違った香り、味」を味わっていただくことができると思います。ぜひお試しいただき、そしてメールなどでみなさまのご意見をうかがえればうれしいです。

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